マルミノアヤメイグチ?
2009/07/11 三重県松阪市

神社のシイ林の比較的日当たりの良い場所にクロアザアワタケに似たイグチが発生していた。
傘径4cmくらいで非常に目立たない姿をしているため、もう少しで通り過ぎるところだった。
 
ひょっとすると、これがまだ確認したことのないアヤメイグチではないのかと思った。
もしアヤメイグチであれば、キクバナイグチの仲間なので、顕微鏡で胞子を見ればすぐにわかるはずだ。
 
やっぱし!直感は正しかった。
胞子にキクバナイグチのような筋が見えたときは嬉しくなった。
 (胞子サイズは10.5×6.2μm程度)

この日は、このあと伊賀市の森林公園で「きのこ観察会」があり、そこでも非常に良く似たイグチが採集された。
比較のためにこちらの胞子も観察してみると、やっぱりこれもアヤメイグチ・・? おや・・?
こうやって比較すると、さすがに私の節穴眼でもその違いが分かってきた。
(胞子サイズは13.5×6.1μm程度)

あらためて図鑑の記載を確認してみると、アヤメイグチの胞子はキクバナイグチのように縦筋と横筋が認められるというし、サイズもこれくらい大きい。ということは、こちらの方が本当のアヤメイグチで、胞子に横筋のない前者のきのこはアヤメイグチではないということになる。このきのこを見なかったら詳しく観察もせず前者をアヤメイグチだと思い込んでしまったかも知れない。

では、前者のきのこは一体何者なのか?
良く似た形態で胞子に横筋のないものにビロードイグチモドキというものがある。しかしこれは胞子のサイズが12-14×6-7.5μmとあり、明らかにサイズが大きすぎる。
本郷図鑑のアヤメイグチの記載の後ろに長沢先生が西日本で採集されたというBoletellus badiovinosusが報告されている。それによると、これは胞子の横筋が「ないか、またはまれに局部的に少数しか形成されない」とされ、胞子サイズも9-12×6-7.5で、前者のきのことぴったり一致するようだ。しかし、それ以上の詳しい記載はない。

インターネットでBoletellus badiovinosusを検索してもあまり詳しい情報は得られなかった。
唯一「今日もきのこ 観察日記」というブログの2008年08月07日の記事にマルミノアヤメイグチBoletellus badiovinosus Horakとして掲載されているきのこは、形態的にも前者のきのこと良く似ているようだ。
Boletellus badiovinosus は「マルミノアヤメイグチ」として新産種報告されているのだろうか?

 マルミノアヤメイグチは「北陸のきのこ図鑑」に新称として掲載されていることを「買うとく」さんに教えていただいた。
これによると本種は、最初「石川のきのこ図鑑」で「マルミノビロードイグチモドキ(仮)」と掲載されたが、性質がアヤメイグチに近いため仮称を変更したとされている。池田先生による命名に間違いないようだ。
改めて前者のきのこを、この北陸のきのこ図鑑の記載と比較するとほぼ合致しているため、同種と判断して間違いがないようだ。またひとつ賢くなった・・。(2009.07.18追記)

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