今週中、ずっと続いていた梅雨のような天気もやっと回復し、たくさんのキノコが顔を出してきているような予感がしていた。
ハルシメジの出る梅林を2か所ほど覗いてみると、ハルシメジは最盛期を迎えているようであったが、目的のウメウスフジフウセンタケの方は未だ出てきていない様子であった。ハルシメジはもう見るのもうんざりなので、早々に引き上げて桑の樹下を探索してみた。
キツネノワン(1)が、すっかり成長した姿を見せていた。先週見つけられなかった
キツネノヤリタケ(2)も成長した姿をたくさん見ることができた。
満足して、今度は近所の神社に行ってみる。
神社の入口近くの、いつも
キララタケ(3)が生える場所には、珍しく一本だけであったが、幼菌が顔を覗かせていた。
すぐ近くの地面には径が10cm程もある大型のチャワンタケが見られた。かなりの老菌のようであったが、触ると盛んに胞子を飛ばしている。オオチャワンタケかと思い持ち帰ったが、検鏡等の結果からは
モリノチャワンタケ(4)が妥当と思われる。
その直ぐ隣に、焚き火に使われたと思われる半ば炭化した材木が捨ててあり、その材木から白っぽい
チャワンタケ(5)が出ていた。上記のものの幼菌かも知れないと思われたが、検鏡の結果では側糸の太さなどが全く違っており、別種のチャワンタケのようである。
少し離れた焚き火跡には、フジイロチャワンタケモドキらしきキノコがびっしりと生えているのが見られた。まるで水羊羹で作ったような透きとおった美しいチャワンタケである。このキノコは丁度2年前に別の焚き火跡で見つけたものと同じものであるが、その時は未だ顕微鏡を持っていなかったため、確信は持てなかった。2年越しでやっと検鏡できたわけであるが、その結果は、やはり
フジイロチャワンタケモドキ(6)の特徴と一致していた。2年前にたくさん生えていた焚き火跡には全く出ていないところを見ると、どうやら焚き火跡に1回だけ発生するキノコのように思える。
神社のいちばん奥の方で大きさが数cm程もある
シロキクラゲ(7)に出会った。シロキクラゲは今までもっと小型のものしか見たことがなかったので、少し驚いた。ひょっとしたら違う種類なのかも知れない・・。
シイ林の落ち葉の間から赤茶色のキノコが顔を出している。手にとってみると傷ついたひだから盛んに乳を出している。チョウジチチタケを小型にして、かさの環紋を無くし、少し赤みを付けたような感じの、初めて見る
チチタケ属のキノコ(8)だ。チョウジチチタケと似たような刺激臭も少しあった。
シイの切り株には
カンゾウタケ(9)が美しい姿を見せていた。よく見るとあちこちで小さな幼菌が出始めている様子であった。
倒木にハナビラニカワタケらしきものが出ているように見えたので近づいてみると、これが特大の
キクラゲ(10)であった。今まで見てきた最大級のアラゲキクラゲよりも大きいように思われる。キクラゲはアラゲキクラゲよりも小さいという認識は捨てなければいけないようだ。
まだまだ、この神社の森ではたくさんのキノコに出会えそうであったが、前から気になっている黒いキツネタケが生える場所に行ってみた。
黒いキツネタケ(11)が生える場所は、山添いのやや湿気のある畑の縁といった環境で、ゼニゴケなどの苔がびっしりと生えており、近くにはコナラとカシワの木がある。一見したところでは何もないように見えたが、目を皿のようにしてよく探してみると、やっぱり黒いキツネタケは生えていた。小さな幼菌などはマッチ棒の先程しかないので、這いつくばって探さないと見つからないくらいだ。昨年のものより小型で色も少し薄いように見えた。
昨年撮った写真を本郷次雄先生にも見てもらったのであるが、成長するとかさの中央部がやや窪んでくるという特徴がクロキツネタケの特徴とは一致しないということで、別種と考えた方が良いということであった。
付近のコナラやカシワの落枝には
タマキクラゲ(12)や黄色に黒の縁取りがきれいなキノコがたくさん付いていた。後者の方は意外と日本の図鑑では見当たらない。スイス図鑑(FUGI
OF SWITZERLAND)を調べてやっと
Colpoma属(13)のキノコであることが分かった。
すぐ隣に籾殻をたくさん撒いた小さなみかん畑がある。何かおもしろいものが生えやしないだろうかと以前から気にしていた場所なので少し覗いてみると、畑の縁に撒かれた牛糞の堆肥のあたりから細身の赤いキノコが賑やかに出ているではないか。噂に聞いていた「
ハタケコガサタケ」という名前がすぐに頭に浮かんだ。その何ともいえない美しい色にしばし見とれていた。
もっといろんな場所を歩けば、今日はいくらでも珍しいキノコに出会えそうな予感がしたが、後の処理のことを考えると、もうこれくらいで止めておかないと体が持ちそうにない・・。
「キノコって本当に雨が好きなんだなあ。」ということをしみじみと感じながら、家に向かう車を運転していた。