ゲアストゥルム・フォルニカトゥム
 (Geastrum fornicatum [Huds.: Fr.] Pers.)
         2002/01/03 紀宝町

             別の写真      胞子の写真

 落ち葉の少ない日当たりの良さそうな場所に出ていた。
 別の写真のものは、形態が少し違っており
コフキクロツチガキとは別種かも知れない。


 この写真を見ていただいた菌懇会の井口さんから、日本新産種のゲアストゥルム・
フォルニカトゥム(Geastrum fornicatum)ではないかという丁重なメールをいただき、
早速、標本を送らせていただいた。
 以下、井口様からのメールの一部を引用させていただく。

 「ばかまつ様が<コフキクロツチガキ>としてアップされた写真の菌は、日本新産種で、
ゲアストゥルム・フォルニカトゥム(Geastrum forni−catum [Huds.: Fr.] Pers.)という
きのこであると思われます。
 いまのところ、東京(文京区・大田区)と神奈川(大磯町)とで採集しています。
 コフキクロツチガキは、内皮頂端に突出した口縁盤(胞子が吹き出す頂孔の周囲を
囲む部分)に著しい縦ひだがあり、ケーキのデコレーションに使うクリームの絞り出し用
口金のような外観を呈します。
 また、コフキクロツチガキでは、胞子表面の突起は先端が平らで、胞子のアウトライン
は歯車状にみえます。」

 「日本の「ヒメカンムリツチガキ」というのは、実は複数の種を混同した複合種というべき
状況にあるわけなのです。
 
G. fornicatum (広葉樹林内に発生し、内皮は幼時から青みを帯びず、外皮裂片の先端
は白色・カップ状の菌糸塊の縁に付着する)
 
G. quadrifidum(前種に似るが、より小形で針葉樹林内に発生し、内皮は幼時は青みを
帯び、外皮裂片の先端は白色で浅い皿状をなす菌糸塊の縁に付着する)
 
G. coronatum(G. quadrifidum よりやや大形で、やはり針葉樹林内に発生し、内皮は青み
を帯びるが、外皮裂片の先端は菌糸塊に付着しない)
 
G. nanum(針葉樹林に生え、内皮は灰色を呈し、前3種と違ってザラメ状の結晶におおわ
れない:白くてカップ状〜皿状をなす菌糸塊はなく、外皮裂片の裂け方は浅い:外皮裂片の
内層は厚くてしばしば亀裂を生じ、その表面はザラメ状の微粒子におおわれることはない):
 といった4種を混同した和名です。
 「ヒメカンムリツチガキ」の和名の名が与えられた時の標本が、上記の4種のうちのどれ
だったのかを調べて、その種にこの和名を限定し、残りの3種には各々新しい和名を与え
なくてはならないわけです。」

 「G. aff. fornicatum は、私が都内で採集したものと同種に属するものだと思います。
 ただ、G. fornicatum の記載をいろいろな文献の間で比較してみると、この学名で呼ばれ
る菌の子実体では、口縁盤はほとんど分化しないか、あるいは僅かに分化するに過ぎない、
としている学者がかなり多く、私の集めた標本やばかまつさんの標本といくぶん様相を異に
しているように思われます。」

 同じ場所で昨年3月に採集した標本には明らかにコフキクロツチガキと思われるものが
あるため、混乱してしまったようだ。2種が混生しているのかも知れない。
 この秋には、もっと若い固体を観察してみたい。

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