2005年10月08日()のきのこ

ナガエノホコリタケ(Tulostoma fimbriatum var.campestre)
↑各成長過程のきのこをクリックすると拡大画像が見られます。

 昼から雨もやや小降りになってきた様子なので、昨年大量のナガエノホコリタケが発生していた河芸町の海岸に行ってみた。

 9月4日に確認したときには発生している様子は全くないように思えたのに、今日はもうすでに孔口の開いた成菌も幾つか見られた。 まだ孔口の開いていないものや砂を持ち上げてきたばかりの若い個体があちこちで見られる。(発生状況) 辺りを掘り返してみると、幸いにもいろいろな成長段階の幼菌を見つけることが出来た。
 採集したものを半分に切断して、それらしき順番に並べてみたのが上の写真である。ナガエノホコリタケの成長過程が良く分かるだろう。

 幼菌を見つけたらぜひ確認してみたかったのが担子器であるが、これもいろいろな成長過程の幼菌が手に入ったおかげで、担子器の観察はもちろん、その成長過程まで観察(推察)することができた。 最初は、上の写真で6番くらいの幼菌が担子器の観察に適しているのかと思っていたが、実際は3番のグレバがまだまっ白い程度の幼菌の方が担子器の観察に適していることが分かった。これは、成長の早いごく一部の担子器に胞子が出来はじめているという状態のものである。4〜5番のようにグレバが色づき始めているものは、胞子の付いた担子器そのものはたくさんあるのだが、それがあまりにも多すぎるので観察には不向きなのだ。6番になると、もう担子器は全て溶けてしまって見ることはできない。

 家を出るときには止んでいた雨だが、河芸町あたりに近付くと雷を伴った土砂降りとなった。ちょっと小降りになるのを待って海岸を探索してみたのだが、採集したケシボウズは全て砂まみれの状態となった。仕方なく家で水洗いしてから観察をすることにしたが、ケシボウズを水に放り込むとちょっと面白い発見もあった。1つは、上の写真で上段の1〜5までの幼菌は水に沈み、下段(6〜9)のものは水に浮くということ。もう1つは、水に浮く時に頭部が「浮き」、柄部が「おもり」となって孔口部を水面に出すような形で実にうまく浮くということだ。まるで水に浮いて流されるのを想定して設計されたのではないかと疑ってしまうほどである。

 雨の海岸で私がケシボウズをほじくっている間中、鈴鹿のF1レースの轟音がけっこうな音量で聞こえていた。「こんな雨の中で大変だなあ・・」などと、自分のことは棚に上げてぼんやり考えていた。